最悪の条件を呑ませるテクニック


人間というものは、つねに物事の程度を比較して考える。「不幸中の幸い」というものそれだ。

「家事が全焼したけど、家族全員無事で何よりだった」とか「降格させられたけど、リストラにあわなくてよかった」などといって、自分自身を納得させる。

「家が全焼したから、生きていけない」「降格させられたから、自殺したい」と考える人もいるだろうが、一時的にそう思っても、多くの人は、最悪の事態は避けられたのだからと、最終的には自分のなかで折り合いをつけ、それを励みに立ち直ろうとする。

物事の程度の判断は、ふつう、世間一般の常識に準拠している。だから、リストラ旋風が吹き荒れる今日、「降格になったけど、いつリストラにあっても不思議ではない景気のなか、降格になっただけの自分は、まだいいほうだ」と受け止めることができる。つまり、リストラと降格を対比して判断をするわけで、これを対比効果という。この対比効果を活用すれば、交渉を有利に運び、相手を納得させることが可能になる。

人事課の人が、営業部の社員を地方に左遷することに決定し、転勤命令を伝えるさい、「ほんとうは君はリストラ候補に上がっていたのだけれど、これまでの功績もあるし、高校生と中学生の子供もいる。だから、会社の恩情で北海道の営業所に転勤してもらうことにした」と言えば、当の社員は「リストラされなくてよかった」と、軽い処分にうけとめて、むしろほっとするだろう。